先日、グランマから電話があり、「急やけどね、明日、パパ(じぃじ)が東京に行かはることになってねぇ・・・。」と言う。何でも、退職してから株にハマッテいて、東京までセミナーを受けに来るというのだ。セミナーといっても、初心者向けのものと思われ、たった一日だけ(数時間)のものだ。それで、セミナーが終わったら、うちに寄って、かわいい孫の顔を見たいとのことであった。
「パパは一人の方が気楽やし、ホテルも取ってあるし、晩ご飯も用意せんでええよ。好きなお店行って適当に食べはるからね。ちょっと会ったらそれでいいって・・・。」とグランマ。電話の奥で「そやそや、それでええ、ええ。」と相槌を打っているじぃじの声。
そして、翌日の夕方になり、じぃじから電話があった。「もう駅に着いて、今、家に向かって歩いている」とのことだった。
珍しく、GEM兄ちゃんはリビングでマッタリくつろいでいるし、メロジーは、“おかあさんといっしょ”を見ながら、何やらひとりでおしゃべりしつつ機嫌よく遊んでいる。私はふたりに気付かれないよう、そーっと部屋を出て、じぃじを出迎えがてら玄関で掃き掃除をしていた。
間もなく、ウキウキ顔のじぃじが現れた。
「はい来たよ♪(メロジーは)どうしてる~?」
「今ね、リビングでGEMと一緒にいるの。すぐ行くから先に上がってて!」
じぃじは「そーか、そーか♪」と言いつつ靴を脱ぎ、階段を上がって行った。私は急いでゴミを掃き集め、外のゴミ箱に捨てた。
と、その時、「うわぁ~ん、ぎぁ~ん、わぁーん、ぎゃーーー」というメロジーの大きな泣き声と同時に、「ワンワンワンワン!!!ワンワンワンワンワン!!!!!」と、兄ちゃんが激しく吠える声がして、私は慌てて二階へかけ上がった。
リビングのドアを開けると、顔中、涙でぐしゃぐしゃにしながら大泣きしているメロジーと、そのメロジーをオロオロ困り顔で抱っこしているじぃじと、体に力をこめて、じぃじにワンワン吠え続けている兄ちゃんがいた。
私はすぐ、メロジーを受け取り、兄ちゃんに「大丈夫、大丈夫、じぃちゃんだよ!じぃちゃんのこと覚えてるでしょ!」と声を掛けた。そしてメロジーの涙を拭こうとして、お顔にたくさん兄ちゃんの毛がくっ付いているのに気付いた。
じぃじの話では、リビングに入ってメロジーに声を掛けた瞬間、GEMが吠え出し、メロジーも突然入ってきたじぃじにびっくりして泣き出したそうだ。じぃじがメロジーをあやそうとして抱き上げたら、GEMがワンワン吠えながら体当たりしてきたらしい・・・。その時に、兄ちゃんの毛が涙で濡れたメロジーのお顔にくっ付いたのだ。
兄ちゃんもメロジーも、じぃじと会うのは2回目だ。だけど、2ヶ月半以上も前にちょっと会ったくらいじゃ、メロジーは全く覚えてないだろうし、最近、人見知りするようになってきたので、泣くのは当然だ。兄ちゃんだって、覚えてるかどうかというよりも、メロジーが連れ去られると思って、必死だったのだ。
「GEMはなぁ、(メロジーを)守ろうとしたんや・・・。変なヤツが来たと思ったんやろうな・・・。」と、じぃじがつぶやいた。
暫くして、兄ちゃんがじぃじのことを思い出したのか、ロープを持ってきて、「遊んでよ!ワンワンワン!!」と騒ぎ始めた。
メロジーもようやく落ち着き、ヒックヒック言いながらも、私の腕から降りて、床をハイハイし、じぃじの足元で遊び始めた。
じぃじは、メロジーに話しかけたり、兄ちゃんのロープ遊びの相手になったりしながら、少しホッとしたようだった。
「お人形でも買おうと思ったけど、ママ(グランマ)に、それよりもお小遣いあげた方が喜ぶって言われたから、これで何か好きなもん買うたげて・・・。」と水引きの描かれたポチ袋をテーブルに置き、お茶を一杯飲んだだけで、「ほな、そろそろホテル行くわ。」と早々に立ち上がった。
「もう帰るんでしゅかー?」と兄ちゃん、そわそわしてワンワンワン!
最後に玄関でじぃじがまた「抱っこしよかー?」と手を出しても、まだそこまでは打ち解けていないメロジーは私にしがみ付いたままだった。
「ほな、お盆に帰ってくるの、じーちゃん待ってるよ。気ぃつけてな。バイバイ、バイバイ~・・・」とドアの隙間から手を振って行ってしまった。結局、じぃじは30分くらいしか家に居なかった。
皆、ごめんね。私が迂闊だった。
子供たちが“おりこうさん”にしてくれているのを良い事に、私はこっそり部屋を出て行ったのに、それに気付いていないふたりが、急に入ってきたじぃじを見て驚かないわけがない。誰でもびっくりするはずだ。自分たちが知っている人かどうかなんて、考える余裕もなかっただろう。メロジーに怖い思いをさせてしまったね。兄ちゃんはそんなメロジーを「連れてかないでー!!」って、必死に守ろうとしてくれたんだ。
じぃじだって、数時間のセミナーだけだったら、わざわざ東京に来なかったかもしれない。かわいい孫に会えると思ったから、参加したのだろう。
私がこんなマヌケなことをしなければ、じぃじはメロジーをたくさん抱っこできたかもしれないのに。とても楽しみにしていたはずなのに・・・。
翌々日、グランマから電話があった。「パパね、夕べ帰ってきてね、今朝は珍しくまだ寝てはるねん。疲れはったんやねぇ。(メロジーに)会うの、楽しみにしてはったのに、えらい泣かれて大変やったみたいねぇ。そやけど、GEMちゃんも、ボーッとしてるようで、いざとなったらしっかりしてるやん。普段は逃げ回ってても、「ボクの妹や!」と思てるんやねぇ。はははは~♪」
そうなんですの。ちょっと落ち込んだ一件だったけれども、GEMちゃんのステキなお兄ちゃん像を垣間見ることができて、お陰で私はちょっぴり救われたのだった。
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